
求人媒体の見積書が2通、机の上にあるとします。片方は月額20万円で4週間の掲載。もう片方は掲載料が0円で、応募が1件入るごとに1万円。どちらが安いでしょうか。この問いにその場で答えられないまま、前回と同じ媒体をなんとなく選び直していないでしょうか。
この記事では、課金方式の違いを応募1件あたりの金額にそろえて比べる手順を扱います。総額に入れ忘れやすい費用、どちらが安くなるかが入れ替わる境目の求め方、応募単価が同じでも後から差がつく契約条件、そして1媒体ずつ試すときの記録の取り方までを順に説明します。媒体そのものの一覧比較ではなく、手元の見積書を数字に直す作業に絞ります。
掲載課金と成果課金は何が違うのか
掲載課金は、求人ページの枠を一定期間買う方式です。契約した時点で支払額が決まり、応募が何件来ても、1件も来なくても金額は変わりません。社内の費用としては固定費に近い性質を持ちます。
成果課金は、あらかじめ決めた成果が発生したときにだけ費用が生じます。成果の定義は媒体によって異なり、応募が入った時点で課金される応募課金、入社や内定が決まった時点で課金される採用課金などがあります。支払額が結果に連動するため、変動費に近くなります。
その中間にクリック課金があります。求職者が求人をクリックした回数に応じて費用が発生し、応募まで進むかどうかは保証されません。二択で考えると分類に迷いますが、次の章の換算をすれば同じ土俵に乗せられます。
| 課金方式 | 費用が発生する時点 | 応募が0件のときの費用 | 応募が想定を大きく超えたとき |
|---|---|---|---|
| 掲載課金 | 掲載を開始した時点 | 契約額をそのまま支払う | 追加費用は発生しない |
| クリック課金 | 求人がクリックされた時点 | クリックがあれば費用は発生する | 予算の上限まで費用が伸びる |
| 応募課金 | 応募が入った時点 | 原則として発生しない | 件数に比例して費用が伸びる |
| 採用課金 | 入社または内定が決まった時点 | 原則として発生しない | 採用人数に比例して費用が伸びる |
見積書を受け取ったら、営業担当に質問を1つだけ用意してください。「この金額のうち、応募が0件でも発生するのはいくらですか」。返ってきた金額が固定費、残りが変動費です。この2つに分けるだけで、比較の準備は半分終わります。
応募1件あたりの単価に換算する計算
式そのものは単純です。応募単価は、その媒体に支払った総額を応募数で割って求めます。難しいのは式ではなく、総額に何を含めるかの判断です。掲載料だけで計算すると、掲載課金が実際より安く見えます。
- 原稿の制作費や撮影費(初回だけ発生することが多い)
- 初期費用や登録料(契約期間で割って月ごとに配分する)
- 上位表示や特集枠などのオプション料金
- 代理店を通す場合の運用手数料
- 自社で原稿を書いた時間(1時間あたりの人件費で概算する)
仮の数字で計算してみます。掲載料20万円に原稿制作費3万円を加えた総額23万円で、応募が30件だった場合、応募単価は約7,700円です。原稿制作費を計算から外すと約6,700円になり、1,000円ずれます。この差は媒体を比べるときの結論を動かします。
同じ職種を応募課金で出し、1件1万円で30件の応募があれば、支払総額は30万円、応募単価はそのまま1万円です。ここだけ見れば掲載課金のほうが安く見えます。ただしこれは応募が30件来た場合の結果で、5件しか来なければ掲載課金の応募単価は4万6,000円に跳ね上がり、成果課金は1万円のままです。
今日から取りかかるなら、過去3か月分の請求書を並べ、媒体ごとに「支払総額」と「応募数」の2列だけを作ってください。列を3つ以上作ると集計が続きません。この2列があれば、次の判断に進めます。
どちらが安くなるかの分かれ目
2つの方式は、応募数がある水準を超えたところで立場が入れ替わります。その水準は割り算1回で出ます。分かれ目となる応募数は、掲載課金の総額を成果課金の1件単価で割ると求められます。
先ほどの例なら、23万円÷1万円で23件です。23件を超える応募が見込めるなら掲載課金が安く、下回るなら成果課金が安くなります。採用会議に持っていく数字は、媒体の機能一覧ではなくこの1つで足ります。
次に、その23件が現実的かどうかを自社の記録で確かめます。同じ職種・同じ勤務地で過去に出した求人の応募数が残っていれば、それがもっとも確かな手がかりになります。記録がない場合は、見込みを立てられないという事実のほうが重要で、そのときは読み違えても損失が限定される成果課金から始めるほうが安全です。
一方で、応募が想定より多く集まったときに強いのは掲載課金です。追加費用が発生しないため、応募が増えるほど単価は下がっていきます。応募数を事前に予測できるかどうかが、方式を選ぶときの実質的な判断材料になります。
なお、そもそも何件の応募が必要かを離職率と通過率から逆算する手順は、来期の採用人数から必要な応募数を出す方法にまとめています。
応募単価が同じでも差がつくところ
応募単価が同額の媒体が2つ並んでも、実際の負担は同じではありません。応募のうち何件が面接まで進むかが違うからです。分母を応募数から面接実施数に変えて、もう一度割ってください。面接1件あたりの単価は、支払総額を面接実施数で割って求めます。
たとえば、応募単価8,000円で応募30件、うち面接実施が6件の媒体は、面接1件あたり4万円です。応募単価1万円で応募20件、面接実施が10件なら、面接1件あたり2万円になります。応募単価では前者が安く、面接まで見ると後者が安くなります。どちらの数字を会議に出すかで結論が反転します。
- 無効応募(連絡先の不備、重複応募、明らかないたずら)の定義と、費用が戻るかどうか
- 返金や無効の申請ができる期限(応募から何日以内か)
- 掲載の途中で原稿を差し替えられるか、差し替えに追加費用がかかるか
- 応募の通知方法と速さ(メールのみか、管理画面での確認が必要か)
- 掲載期間の延長・停止の条件
特に成果課金では、無効応募の扱いが総額にそのまま効きます。定義があいまいなまま契約すると、連絡がつかない応募にも費用を払うことになります。口頭の説明で済ませず、契約書のどこに書かれているかを申し込み前に指さして確認してください。
あわせて、応募した側から見た体験も費用に跳ね返ります。連絡が数日途切れる、選考がどこまで進んでいるか分からないという状態が続けば、費用を払って集めた応募が途中で離れていきます。通知の速さや管理画面の使いやすさは、単価の話と切り離せません。
なお、面接まで進んだ人に何を確認するかは、媒体選びとは別の準備です。書類だけでは分からない特性を事前に把握する手段としてTekiLens(適レンズ)のような分析がありますが、検査の選び方そのものは別記事で扱います。
1媒体で試してから広げる
複数の媒体に同時に出すと、応募が来ても来なくても原因が分かりません。原稿が合わないのか、媒体が合わないのか、時期が悪いのかが混ざります。最初は1媒体ずつ、条件をそろえて出します。
そろえるのは、原稿の内容、掲載期間、勤務地、募集職種の4つです。期間は4週間を1単位にすると、週ごとの変動をならせます。同じ月に別の媒体を重ねないことが、この進め方の唯一の制約です。
記録するのは、支払総額(オプションと制作費を含む)、応募数、面接実施数、内定承諾数の4つです。これを媒体ごと・月ごとに残し、同じ傾向が2回出るまで判断を保留してください。1回の結果は季節や競合の出稿量に左右されます。全国求人情報協会の集計では、2026年6月の求人広告掲載件数は約253万件で、前年同月を6.4%上回りました。周囲の出稿量が変われば、同じ原稿でも応募数は動きます。
市況も同じです。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2026年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍でした。過去に出た応募単価をそのまま来期の前提に置かず、四半期ごとに数字を更新してください。予算を増やす対象は、面接1件あたりの単価が許容範囲に収まった媒体だけに絞ります。
なお、求人媒体とは別の経路である社員紹介について、紹介が止まる地点と打ち手は、社員紹介が出てこないのは報酬額の問題ではないで扱っています。
面接に進んだ後の準備まで含めて整えたい場合は、サービス内容と料金のページもあわせてご覧ください。導入にかかる費用の考え方はこちらの記事で扱っています。
よくある質問
成果課金なら、予算を超える心配はないのでしょうか。
応募件数に上限を設けていない契約では、想定を超えた分だけ費用が伸びます。月間の課金上限、または課金対象となる応募件数の上限を契約書に明記できるかを、申し込み前に確認してください。上限を設けられない場合は、掲載を途中で停止できる条件を代わりに押さえておきます。
掲載課金で応募が0件だった場合、返金はありますか。
返金の規定を置かず、掲載期間の延長や再掲載で対応する契約もあります。対応の有無と条件は媒体ごとに異なるため、「応募が一定数に満たなかったときの取り扱い」を書面で確認してください。口頭の約束は記録に残らず、後から確認できません。
クリック課金は、掲載課金と成果課金のどちらとして比べればよいですか。
どちらにも当てはめず、支払総額を応募数で割って応募単価に直してから比べます。クリック課金は応募までは保証しないため、クリック単価が安くても応募単価は高くなることがあります。判断はクリック単価ではなく応募単価で行ってください。
応募単価はいくらなら妥当と言えますか。
職種、勤務地、時期によって大きく変わるため、外部の相場だけを基準にすると判断を誤ります。自社が過去に出した同じ職種の実績と、採用1名に対して支払える上限額の2つから決めるのが現実的です。採用費用全体の内訳と配分については別記事で扱います。
同じ媒体に2回目を出すと、単価は下がりますか。
1回目の原稿と反応の記録が残るぶん改善の余地はありますが、下がることが保証されるわけではありません。応募が集まった時間帯や、どの検索条件から見られたかなど、媒体の管理画面で確認できる情報を1回目のうちに保存しておくと、2回目の判断材料になります。
参考にした資料
求人の出し方から選考の進め方までを一度に見直したい場合は、無料相談で現状をお聞かせください。自社の状況に合わせて、どこから手を入れるかをご一緒に整理します。