既存社員に適性検査を案内するときの説明文と段取り

既存社員に適性検査を案内するときの説明文と段取り
既存社員に適性検査を案内するときの説明文と段取り

「来月、全社員に適性検査を受けてもらいます」。この一文をメールに書いたところで、手が止まっていないでしょうか。書き足すことが多い気もしますし、書きすぎると余計に構えられる気もします。実施を決めた担当者が最初にぶつかるのは、検査選びではなく社内への説明です。

この記事では、検査の中身や選び方には触れません。扱うのは、案内文に必ず入れる4つの要素、結果を誰にどこまで見せるかの決め方、社員から出る質問への答え方、実施までの4週間の段取りの4点です。明日そのまま下書きに使える形でまとめました。

目次

社員が身構えるのは説明が足りないから

「適性検査を実施します」という一文だけが届いたとき、社員がまず考えるのは検査の中身ではありません。「なぜ今、自分が」と「この結果はどこへ行くのか」です。案内文がこの2点に答えていないと、受け取った側は自分で空白を埋めます。埋まる内容は、たいてい悪いほうに寄ります。

口に出しにくい疑問は、次の4つにほぼ集約されます。聞かれないだけで、消えているわけではありません。

  • 結果が人事評価や昇給・昇進の判断に使われるのではないか
  • 自分の性格に関する内容が、直属の上司にそのまま渡るのではないか
  • 断ることはできるのか、断ったこと自体が記録に残るのではないか
  • なぜ自分の部署(自分の年次)だけが対象になっているのか

この4つは、検査の仕組みを説明しても消えません。消えるのは、結果の扱いと段取りを先に示したときです。案内文を書き始める前に、人事側でこの4つに文章で答えてみてください。1つでも「まだ決めていない」が残るなら、その状態で出さないでください。決まっていない項目は、ほぼ確実に第一問になります。

検査そのものの意義や選び方は、別記事で扱います。ここから先は、社内に説明して実施にこぎつけるまでの文書と段取りに絞ります。

案内文に必ず入れる4つの要素

案内文の出来は、長さではなく要素が揃っているかで決まります。分量はA4一枚、メールなら1画面に収まる程度で十分です。次の4つが入っていれば、追加の説明はほとんど要りません。

要素案内文に書く内容欠けたまま出すと起きること
何のために実施するのか結果を使う場面を具体的に。例「◯◯部の配置検討と来期のキャリア面談の材料にするため」「人材データの活用のため」で済ませると想像で用途が補われ、評価目的だと受け取られる
誰が何をどこまで見るのか本人・所属長・人事のそれぞれについて、見える範囲を1行ずつ明記する上司にどこまで渡るかが最大の関心事なので、真っ先に質問が集中する
いつ・どれくらいかかるのか受検期間、所要時間の実測値、業務時間内に受けてよいかの可否「各自で都合のよいときに」だけだと、繁忙部署から反発が出る
任意か業務か・結果は返るのか会社としての位置づけと、本人へのフィードバックの時期位置づけが曖昧だと問い合わせが所属長に集中し、結果が返らないと次回の協力が得にくくなる
案内文に入れる4要素と、抜けた場合に起きること

最も雑になりやすいのが「何のために」です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、利用目的をできる限り具体的に特定しなければならないとされ、本人にとって一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に特定することが望ましいとされています。社内向けの案内文も同じ水準で書くのが無難です。

順番は、実施の事実と目的を2文、開示範囲、日程と所要時間、問い合わせ先と期限の順です。目的より先に日程を書くと事務連絡として読み飛ばされ、後から「聞いていない」が出ます。1画面に収まらないときに削るのは、検査そのものの説明部分です。社員が知りたいのは仕組みではなく、自分の情報の扱いだけです。

結果を誰にどこまで見せるかを先に決める

開示範囲は、案内文を書く前に確定させます。後から範囲を広げるのが、最も信用を損なう進め方だからです。「人事だけが見ます」と伝えた結果を翌月に所属長へ配ってしまうと、次の施策で協力が得られません。

決め方は三層で考えると早いです。本人・直属の所属長・人事の3つに分け、それぞれ「見せる/見せない/要約のみ見せる」を選びます。判断基準は、その人が来月の業務でその情報を実際に使うかです。使う予定がない立場には渡さない。これだけで範囲はかなり絞れます。

用途の限定も案内前に結論を出します。「人事評価には使いません」と明記する会社もあれば、配置検討や登用の参考にすると決めた会社もあります。問題はどちらを選ぶかではなく、決めた用途と違うことを書くことです。書いた範囲を超えて使わない。この一致だけは守ってください。

法令面では、本人から直接書面等で個人情報を取得する場合、あらかじめ利用目的を明示することが求められています。あわせて避けたいのが、労働安全衛生法にもとづくストレスチェックとの混同です。こちらは2015年から事業者に義務づけられた別の制度で、個人の結果を事業者へ提供するには本人の同意が必要とされています。案内文で両者を並べて書かないでください。健康診断結果などの健康情報にも別途の留意事項があるため、自社の検査の位置づけは社会保険労務士や顧問弁護士に確認しておくと安全です。

TekiLens(適レンズ)でも、検査結果を配属の検討やキャリア相談、入社後のマネジメントに接続する使い方を想定しています(サービス紹介)。誰まで共有するかは仕様ではなく各社の運用で決める部分です。導入前に線引きを決めておくと、案内文の作成が楽になります。

想定される質問と答え方

案内を出すと必ず質問が来ます。多くは所属長を経由して人事に上がります。答えの型を先に決めておかないと、担当者ごとに回答が変わり、それ自体が新しい不信を生みます。よく出る5つを挙げます。

  • 「評価に響きますか」→ 案内文で決めた用途をそのまま繰り返します。言い換えたり、その場で広げたりしないことが重要です。
  • 「上司は全部見られるのですか」→ 三層で決めた範囲を言葉にします。見える範囲と見えない範囲の両方を伝えると届きます。
  • 「受けない選択はできますか」→ 業務なのか任意なのかを案内前に決めておきます。未確定のまま聞かれると回答が詰まります。
  • 「悪い結果が出たらどうなりますか」→ 優劣を測るものではなく傾向をとらえるものだ、という前提を先に共有します。そのうえで、結果は本人への説明と対話に使うと伝えます。
  • 「なぜ自分の部署だけですか」→ 対象範囲の決め方(部署単位で試すのか、全社を段階的に進めるのか)を説明します。理由を伏せると、特定部署への問題視だと受け取られます。

ストレスに関する指標が含まれる場合は、扱いを特に慎重にしてください。数値が低い人を処遇で不利にする材料にはせず、面談で環境や業務量を確認するきっかけとして使う、という位置づけを明示します。同じ特性でも、どういう環境なら力を発揮できるかは人によって変わります。特性を欠点として処理しない姿勢を一文入れておくと、受け取られ方が変わることが期待できます。

面談で状況を確認する際の最初の切り出し方は、様子が変わった部下に、最初にかける一言にまとめています。

実務上の判断基準もひとつ。答えが決まっていない質問に「未定です」と返さないでください。「◯月◯日までに回答します」と期限で返します。未定という言葉は、社内では隠しごとと読まれやすいためです。

実施までの段取り

社内で合意を取りながら進めるなら、案内から受検締切まで4週間ほど見ておくと無理がありません。1週間で回そうとすると、質問対応が実施期間と重なり、人事の負荷が一気に上がります。

時期やること完了の目印
4週間前目的・開示範囲・用途の限定・任意か業務かを人事内で確定前章の4つの疑問に文章で答えられる
3週間前案内文を作成し、経営層と所属長に先に共有所属長からの想定質問が出尽くし、回答が揃う
2週間前管理職に先行して受検してもらう所要時間の実測値が取れ、操作面のつまずきが洗い出される
1週間前全社員へ案内を配信し、問い合わせ窓口を1つに固定質問が1か所に集約され、回答が食い違わない
受検期間中部署単位の進捗のみ共有し、個別の督促は所属長経由未受検者を個人名を晒さずに追える
案内から受検締切までの4週間の進め方

順番で最も効くのは、管理職に先に受けてもらうことです。社員の質問は人事ではなく直属の上司に向かうことが多く、上司が受けていないと答えられません。所要時間や画面の分かりにくさも事前に潰せます。TekiLens(適レンズ)の場合は72問・約15分ですが、所要時間はサービスによって異なります。案内文に書く前に、自社で実測した数値を確認してください。

未受検者への対応も先に決めます。全員宛のメールで名指しの督促をすると、それだけで施策全体の印象が悪くなります。部署ごとの受検率だけを共有し、個別の声かけは所属長に任せる形が現実的です。締切を1度延長する前提で組んでおくと、延長が不手際に見えずに済みます。

最後に、実施後の予定を案内文の段階で1行書いてください。「結果は◯月中に本人へ返却し、翌月の面談で使います」といった具合です。この一文の有無で、受検の意味づけが変わります。結果が返ってこない検査は、次回の協力が得にくくなりがちです。

返却した結果を本人との対話や配置の検討に使う考え方は、配属検討に適性検査をどう活かすかで扱っています。

よくある質問

全社一斉と部署単位、どちらから始めるべきですか。

人事以外に運用を手伝える人がいない体制なら、部署単位の試行から始めるほうが安全です。1部署で質問と回答を出し切ってから広げると、案内文の精度が上がります。ただし対象を絞る場合は、なぜその部署なのかを案内文に必ず書いてください。

案内は誰の名義で出すのが適切ですか。

目的が配置やキャリア面談に関わるなら、人事部長以上の名義が向いています。担当者名義だと「現場の一施策」と受け取られ、所属長の協力が得にくくなるためです。名義とは別に、問い合わせ先として担当者名と連絡先を明記しておきます。

業務時間内に受けてもらう必要はありますか。

会社として実施する以上、業務時間内で受けられる前提にしておくほうが問い合わせは減ります。時間外に各自でという運用にする場合は、その扱いを事前に労務担当と確認し、案内文にも明記してください。ここが曖昧だと、繁忙部署から反発が出やすくなります。

採用選考のときに受けた検査結果を、今回の目的にそのまま使えますか。

取得時に伝えた利用目的の範囲を超えるかどうかがまず問われます。ガイドラインでは、利用目的の変更は変更前の目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならないとされ、変更した場合は本人への通知または公表が必要とされています。使い回しを検討する際は、自己判断せず専門家に確認してください。

どうしても受けたくないという社員が出たら、どうすればよいですか。

まず理由を聞く場を設けてください。多くの場合、検査そのものではなく結果の扱いへの不安が理由です。開示範囲を改めて説明して解消することもあります。それでも残る場合は、任意か業務かという最初の位置づけに戻って判断することになります。

参考にした資料

TekiLens(適レンズ)の機能・料金・活用イメージは、サービス資料で詳しくご覧いただけます。採用に関するお悩みは、無料相談で承っています。

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