様子が変わった部下に、最初にかける一言

様子が変わった部下に、最初にかける一言
様子が変わった部下に、最初にかける一言

「なんとなく、以前と様子が違う」。特定のメンバーについてそう感じたまま、数週間が過ぎていないでしょうか。声をかけたほうがいいのは分かっている。ただ、何を根拠に切り出すのか、切り出したあと何を聞くのかが決まっていないため、いつも「もう少し様子を見よう」で終わってしまいます。

この記事では、変化に気づいた上司がその日から実行できる手順だけを扱います。変化の記録の仕方、面談を設定するまでの日数、最初にかける一言、20分の配分、そして聞いた話の共有範囲。迷いやすい場面には公的資料に基づく基準を添えました。

目次

変化は他人との比較ではなく、その人の前との差に出る

「元気がない」と感じたとき、多くの上司は無意識にその人を他のメンバーと比べています。この比べ方では見つかりません。もともと物静かな人はいつまでも「変化なし」と判断され、ふだん明るい人の小さな沈み込みは見落とされます。

手がかりは、他人との差ではなく、その人自身の少し前との差です。先月の本人と今週の本人を並べると、見る対象が性格から行動に移ります。

記録するのは、外から見えた事実だけにします。「落ち込んでいる」は解釈で、「今週、朝会で一度も発言しなかった」は事実です。解釈から書き始めると、上司の推測がいつのまにか前提になります。

解釈ではなく行動の事実から確認する考え方は、管理職への登用を判断する場面についてもエースを管理職にする前に本人と話しておくことで扱っています。

観察する行動事実として書く書かないほうがよい表現
出退勤今月、始業直前の到着が3回。以前は15分前が定着やる気を失っている
会議での発言直近3回の定例で発言なし。以前は毎回2〜3回自信をなくしている
依頼への反応返信が翌日以降になる状態が2週間続いた仕事を軽く見ている
提出物同じ資料の差し戻しが2回。以前は0〜1回能力が落ちた
記録は事実にとどめ、解釈は面談で本人と確認する

手帳でもメモアプリでもよいので、同じ場所に日付と観察した事実を1行だけ書きます。これを2週間続け、同じ方向の変化が3回並んだら動くと決めておきます。「3回」という線を先に引いておけば、動くか待つかで迷わなくなります。

気づいてから席を用意するまでの日数を決めておく

3回並んだと判断したら、次に決めるのは日程です。目安は3営業日以内。当日いきなり呼び出すと詰問として届き、1週間以上空けると上司の側の熱が下がります。3営業日は、本人が心の準備をでき、上司も逃げ切れない幅です。

設定するときは、件名に用件を書き(「業務の進め方について20分」など)、所要時間を先に伝えます。場所は会話が漏れない部屋、時間帯は午前中か午後の早い時間を選びます。最後に「都合が悪ければ日を変えます」と添えると、当日は話しやすくなります。

厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、ストレスを相談できる人がいる労働者の割合は94.6%です。相談できる人として挙がったのは「家族・友人」が68.6%、次いで「上司」が65.7%でした(相談できる人がいる労働者を100とした割合)。一方、実際に相談したことがある人は、相談できる人がいる労働者のうち74.7%にとどまります。上司は相談先として広く想定されているのに、4人に1人は相談しないまま抱えている計算です。

同じ調査では、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は、30〜49人規模で14.4%、100〜299人規模で55.8%でした。300名以下の会社でも珍しい出来事ではありません。だからこそ、席を用意する側から動きます。

最初の一言と、言ってはいけない聞き方

面談の成否は最初の30秒でほぼ決まります。冒頭に入れる要素は3つです。この場が評価と関係ないこと、なぜ声をかけたのか(観察した事実を一つだけ)、話さない自由があること。

そのまま使える例文です。「今日は評価とは関係のない話です。ここ2週間、定例で発言が少ないのが気になっていて、私のほうで進め方を間違えていないかを確かめたくて時間をもらいました。話したくないことは話さなくて大丈夫です。」主語を相手ではなく自分に置き、挙げる事実は一つに絞ります。三つ並べると、証拠を突きつけられたように聞こえます。

よくある聞き方話が閉じる理由置き換え
大丈夫?「大丈夫です」としか答えられない形になっているここ2週間、定例での発言が気になっていました
最近どう?範囲が広すぎて、当たり障りのない返答に落ち着くいま抱えている中で、一番重いのはどれですか
疲れてる?上司の見立てが先に置かれ、否定しにくい先月と比べて、負荷はどう変わりましたか
もう少し頑張ろう励ましがそのまま追加の要求として届くいったん外せる仕事はどれですか
置き換えの共通点は、事実を示して答えの範囲を狭めること

相手の特性を言葉にできていると、この置き換えは楽になります。TekiLens(適レンズ)が対象としているのは採用選考の工程です。応募者の特性を、面接で確認すべき論点として整理します(受検データは採用選考の目的にのみ利用します)。検査結果から定着の傾向を読む方法は、別記事「人材の離職防止に効く適性検査の選び方」で扱います。

20分をどう使うか。聞く順番と、その場で決めないこと

配分を先に決めておくと、沈黙に耐えられます。最初の3分で切り出しと目的を伝え、次の12分は聞くことだけに使い、最後の5分で次の約束をします。この型を覚えておけば、その場で言葉に詰まりません。

  • 相手が言い終わってから2秒待つ
  • 沈黙を上司の説明で埋めない
  • 原因ではなく「いつごろからそう感じていますか」と時期から聞く
  • メモを取るときは「記録していいですか」と先に断る

最後の5分でやってはいけないのは、その場で結論を出すことです。異動、業務量の変更、評価への反映は1回の面談で決められません。約束してよいのは「次にいつ話すか」だけです。「来週の同じ時間に15分もらいます」と決めて終えれば、面談が一度きりで終わりません。

相手が入社1〜3か月の中途入社者なら、期待値・情報・権限を先に確かめる手順を中途入社者が成果を出せないとき、まず見る3か所にまとめています。

一方で、上司が抱え込んではいけない領域があります。眠れていない、食欲がないといった生活面の話が出たら、上司の判断で解釈せず専門職につなぎます。厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、管理監督者が担う「ラインによるケア」を職場環境等の把握・改善と労働者からの相談対応と定め、専門的な対応は産業医などによる「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」として区別しています。

産業医の選任義務がない労働者数50人未満の事業場でも、労働者健康安全機構の地域産業保健センターで医師や保健師による健康相談を原則無料で利用できます。面談の前に管轄センターの連絡先を調べておいてください。

聞いた話をどこまで共有してよいか

面談後につまずきやすいのがここです。よかれと思って人事や他のメンバーに伝え、それが本人の耳に入り、「言わなければよかった」で終わる。上司の判断で後から共有範囲を広げないことが、次回も話してもらえる条件です。

前述の指針は、健康情報を含む労働者の個人情報を医療機関等の第三者へ提供する場合も、原則として本人の同意が必要だとしています。さらに、事業者が心の健康に関する情報を入手する場合には本人の同意が必要であり、その情報を「労働者に対する健康確保上の配慮を行う以外の目的で使用してはならない」と明記しています。人事評価の材料にすることは、この時点で選択肢から外れます。

ただし同じ指針は、生命や健康の保護のために緊急かつ重要と判断される場合には、本人の同意を得ることに努めたうえで必要な範囲で利用すべき場合もあるとし、産業医等を選任している事業場ではその判断について相談することが適当だとしています。線引きを一人で背負う必要はありません。

実務では、面談の最後に共有範囲を本人と決めて言葉にするだけです。「今日の話は私の中に留めます」で済むのか、人事担当者まで伝えてよいのか、チームには理由を伏せて予定調整だけ行うのか。記録に残すのも、観察した事実、本人と決めた共有範囲、次に話す日の3点で足ります。誰が何のために見るのかを先に決める考え方は、TekiLensの検査結果を運用するときも同じです。

検査結果を誰にどこまで見せるかを先に決める段取りは、既存社員に適性検査を案内するときの説明文と段取りで扱っています。

よくある質問

面談を設定したら「特にありません」と言われました。どうすればいいですか。

その場で掘り下げず、観察した事実だけを伝えて終えてください。「ここ2週間こういう様子が気になっていたので確認したかっただけです」と伝え、次に話す日を決めます。1回で引き出そうとするほど、次の機会が遠のきます。

リモート勤務のメンバーの変化には、どうやって気づけばいいですか。

見える行動が減るぶん、記録する項目を先に決めておきます。オンライン会議での発言の状況、チャットの返信までの時間、定例への出席状況など、数えられるものに限定してください。常時監視のような運用は信頼を損ないます。

変化の原因が自分自身かもしれない場合も、自分が面談すべきですか。

冒頭で「私のほうで進め方を間違えていないかを確かめたい」と伝えれば、自分が話す立場でも成立します。相手が明らかに話しづらそうであれば無理に続けず、人事担当者や別のマネージャーに引き継ぐ選択肢を示してください。

話を聞いたあと、業務量を減らすべきか判断できません。何を基準にすればよいですか。

総量ではなく、締切が重なっている期間があるかどうかで見てください。同じ週に複数の締切が集中している場合は、順番を入れ替えるだけで負荷が下がることがあります。

上司である自分に余裕がなく、面談の時間が取れません。

20分が取れないなら10分でも構いませんが、日程だけは先に押さえてください。前述の指針では、事業者はセルフケアの対象者として管理監督者も含めるものとされています。自分の負荷が限界に近い場合は、まず自分の相談先を確保することを優先してください。

参考にした資料

TekiLens(適レンズ)の機能・料金・活用イメージは、サービス資料で詳しくご覧いただけます。採用に関するお悩みは、無料相談で承っています。

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