採用にかかる費用の内訳を、外部支出と社内工数に分ける

採用にかかる費用の内訳を、外部支出と社内工数に分ける
採用にかかる費用の内訳を、外部支出と社内工数に分ける

「今年の採用にいくらかかりましたか」と聞かれたとき、すぐに答えられるでしょうか。多くの場合、出てくるのは求人媒体と人材紹介の請求額です。ところが実際には、面接に出た社員の時間や、応募者に連絡した時間も費用として発生しています。それが見えないまま来期の予算を組むと、金額の大きい外部支出だけを削る話になりがちです。

この記事では、採用にかかる費用を「外部への支払い」と「社内で使った時間」の2つに分けて棚卸しする手順を扱います。公開されている調査データから科目ごとの目安を示し、時間を金額に直す計算式、予算と実績がずれやすい場所、来期の配分を決める順番までを順に見ていきます。

目次

採用費用は外部への支払いだけではない

帳簿に金額として残る採用の費用は、求人媒体の掲載料と人材紹介の成功報酬です。社内で「採用費」と呼ばれるものも、たいていこの2つを指しています。一方、面接に出た社員の時間や、応募者への返信に使った時間は、どこにも採用の費用として記録されません。

社内で使った時間は、もともと支払っている給与の中に紛れます。そのため採用活動が増えても減っても、人件費の総額は見た目上ほとんど変わりません。費用を見直す話になると、目に見える外部支出だけが対象になります。

最初にやることは、紙でも表計算ソフトでも構わないので、2列の表を作ることです。左に外部への支払い、右に社内で使った時間を書き出します。振り分けの基準は一つで、「その募集がなければ発生しなかったか」です。通常業務に含まれる作業は右列に入れません。

外部支出の内訳

外部支出は、合計額ではなく「どの手法にいくら払ったか」まで分けて並べます。マイナビが2026年3月に発表した「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」によると、1社あたりの年間中途採用費用は実績の合計で平均609.9万円、予算の合計で平均696.0万円でした。2025年12月に実施され、従業員数3名以上の企業で採用費用の管理・運用に携わる人事担当者1,500名が回答した調査です。

科目年間予算の平均年間実績の平均実績と予算の差
人材紹介391.5万円375.5万円−16.0万円
求人広告(転職サイトなど)206.0万円125.1万円−80.9万円
ダイレクトリクルーティング223.9万円173.9万円−50.0万円
求人検索エンジン136.2万円122.7万円−13.5万円
その他経費111.3万円128.8万円+17.5万円
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」より作成。科目ごとの平均は当該サービスを利用した企業のみを母数とした値、合計額の平均は回答者全員が母数のため、各行を足しても合計とは一致しません。

同調査では、利用した採用サービス・手法は「転職サイト」が47.1%で最も高く、求人検索エンジン、企業ホームページ、人材紹介会社が4割強で続いています。自社が使う手法の並びが違えば、金額の構成も変わります。表の数字は内訳を当てはめる枠として使い、金額そのものを目標にはしません。

なお、掲載課金と成果課金を応募1件あたりの単価で比べる計算は、掲載課金と成果課金、応募単価で比べるとどちらが安いかで扱っています。

自社の数字を出すときは、勘定科目をまたいで拾う必要があります。掲載料は広告宣伝費、人材紹介の成功報酬は支払手数料、面接会場や交通費は旅費交通費に入っていることが多く、「採用費」という科目だけを見ても全体は出ません。過去12か月の仕訳を「採用」という言葉で検索するより、取引先名で検索したほうが漏れが少なくなります。

社員紹介の報奨金は、給与や賞与に含めて支払われることが多く、外部支出としては見えません。金額の大小にかかわらず、1行として独立させておきます。

社内で発生している工数の見方

社内工数を金額に直すには、時間単価が必要です。月額の給与を月の所定労働時間で割り、そこに社会保険料の会社負担分などを上乗せします。

上乗せ分の目安には、厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」が使えます。同調査では、常用労働者1人1か月あたりの労働費用総額408,140円のうち、現金給与額が82.0%を占めていました。残る18.0%が法定福利費や退職給付等の費用です。つまり給与額のおよそ1.2倍が、会社から見た実際の人件費ということになります。

賃金の水準は、厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」で一般労働者の所定内給与額が男女計34万600円と公表されています。月の所定労働時間を160時間と置くと時間単価は約2,130円、会社負担を含めると約2,550円です。自社の実額がわかるならそちらを使ってください。

  • 求人原稿の作成と、掲載中の修正
  • 応募者への返信と面接日程の調整
  • 応募書類の確認と社内での共有
  • 面接そのもの(参加した人数×所要時間で数える)
  • 内定連絡から入社手続きまでの対応

一度に全期間を測る必要はありません。1か月だけ、採用に関わった人が15分単位でメモを取れば、どの工程に時間が集中しているかは十分に見えます。面接1回の金額は、参加した全員の時間単価を足して所要時間を掛けます。準備と移動の時間も含めると、実感に近い数字になります。

この数字は、応募者への返信が遅れる理由を説明するときにも役立ちます。返信の遅れは、応募した人にとっては他社の選考が先に進む不利益です。担当者の意識の問題にせず、時間が足りない工程として示せると、打ち手が変わります。

なお、確認する論点を事前に整理して面接1件あたりの時間を抑える考え方は、適性検査の導入メリットと面接論点の整理術で扱っています。

予算と実績がずれる場所

内訳を作ったら、次は予算との差を見ます。前出のマイナビの調査では、予算の平均696.0万円に対して実績の平均は609.9万円で、予算が実績を86.1万円上回りました。ただし科目ごとに見ると、ずれ方は同じ方向ではありません。

求人広告は予算より80.9万円少ない実績でした。一方、その他経費だけは実績が予算を17.5万円上回っています。同調査で「その他経費」に含まれるのは、ホームページの製作・改修費、交通費、面接会場費、応募者管理システムの費用などです。名前のついていない科目に費用が集まると、予算の精度はそこから崩れます。

対策は単純で、来期の予算表に「その他」という行を最初から作らないことです。過去12か月の支出のうち、どの科目にも入らなかったものにそれぞれ名前をつけ、独立した行にします。最後まで名前がつかなかったものだけを「その他」に残します。

もう一つ、金額の消化率だけで判断しないことです。同じ調査では、2025年の中途採用人数が平均12.3人だったのに対し、採用目標人数は平均16.7人でした。予算が余っている状態と、採用が計画どおり進んでいる状態は別のことです。

来期の配分を決める順番

内訳が出たら、配分は金額の大きい順ではなく、動かせるかどうかの順で決めます。次の順番で埋めていくと、後から差し込みが入っても崩れにくくなります。

  1. 募集の有無にかかわらず発生するものを先に置く(採用ページの維持、応募者管理ツール、求人検索エンジンの継続運用)
  2. 採用が決まってはじめて発生するものを別枠にする(人材紹介の成功報酬、社員紹介の報奨金)
  3. 社内工数の上限を決める(面接へ出せる時間の総量を、金額ではなく時間で先に決める)
  4. 残った金額を募集チャネルに配る
  5. 名前のついていない支出を洗い出し、それぞれ行を立てる

3番目を先に決めるのが要点です。外部支出をいくら増やしても、面接に出せる時間が足りなければ選考は進みません。応募が増えたときに最初に詰まるのは、金額ではなく時間です。面接1件あたりの所要時間と、月に開催できる件数を先に置いてから、募集の量を決めます。

離職率と通過率から来期の必要応募数を逆算する手順は、離職率と通過率から必要な応募数を出す採用計画にまとめています。

面接の時間が伸びる原因の一つは、何を聞くかがその場で決まることです。TekiLens(適レンズ)は、約15分・72問の受検で候補者の特性を可視化し、職種ごとに重視する傾向をまとめたプロファイルとの差から、面接で深掘りしたい点と質問案を示します。聞く順番が先に決まっていれば、面接1件あたりの時間を短くすることにつながります。料金は月額9,800円(税抜)からで、初回のみ初期導入費が別途かかります(料金の詳細)。

費用と効果を並べて判断する話は、選考ツールの導入コストを扱った別記事で解説しています。この記事では、内訳を分けて配分を決めるところまでにとどめます。

よくある質問

採用費用は、どの期間で区切って集計すればよいですか。

会計年度で締める見方と、募集開始から入社日までを1件として数える見方の両方を持つのが実務的です。年度で締めると年度をまたいだ募集が分断され、1件ごとに数えると年間の総額が見えません。同じ表に両方の列を用意しておくと使い分けられます。

パート・アルバイトの採用も同じ表で管理すべきですか。

正社員とは分けて集計することをおすすめします。1件あたりの外部支出は小さくなる一方で募集の件数が多く、外部支出と社内工数の比重が逆転しやすいためです。混ぜると、どちらの改善の余地も見えにくくなります。

採用がなかった月の費用はどう扱えばよいですか。

採用ページの維持費、応募者管理ツールの月額、求人検索エンジンの継続運用など、募集の有無にかかわらず発生するものがあります。これらは募集ごとの費用と混ぜず、固定的に発生する行として分けておきます。募集を止めても残る金額がすぐにわかります。

社内工数を測るのに専用のツールは必要ですか。

最初は不要です。1か月分を15分単位で手元にメモするだけでも、どの工程に時間が集中しているかは十分に見えます。毎期続けて測る段階になってから、ツールの導入を検討しても間に合います。

選考で使うツールの費用は、どの科目に入れればよいですか。

「その他経費」にまとめず、独立した行を立てることをおすすめします。月額の固定費と初回のみの初期費用という構造が多く、まとめると募集の量に連動しない支出が見えなくなるためです。TekiLensも月額と初期導入費に分かれています。費用と効果を並べた判断は別記事で扱っています。

参考にした資料

採用実務のご相談は無料で承っています。自社のケースで判断に迷う点があれば、お気軽にお問い合わせください。

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