求人票に必ず書く労働条件と、2024年に追加された「変更の範囲」

求人票に必ず書く労働条件と、2024年に追加された「変更の範囲」
求人票に必ず書く労働条件と、2024年に追加された「変更の範囲」

求人票を出すたびに、どこまで書けばよいのか迷うことはありませんか。賃金や勤務時間は当然として、2024年4月からは「就業場所・業務の変更の範囲」という項目が加わりました。専任の人事がいない会社ほど、以前の求人票をそのまま使い回し、追加項目が抜けたままになりがちです。

この記事では、求人時に明示が義務づけられている労働条件を一覧で整理し、2024年4月に追加された3項目について、介護・運送・店舗の職種を例に厚生労働省が示す記載例を確認します。あわせて、明示した条件と実際の条件が食い違うと何が起きるかを、厚生労働省の公表データで見ていきます。

目次

求人時に明示しなければならない事項

求人票に載せる労働条件は、会社が自由に決められるものではありません。職業安定法第5条の3は、労働者を募集する際、およびハローワークや人材紹介会社へ求人を申し込む際に、従事すべき業務の内容や賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。対象はハローワークの求人票に限りません。自社サイトの採用ページも求人広告も同じです。

同省が求人企業向けに公表するリーフレットは、最低限明示すべき労働条件として、業務内容、契約期間、契約の更新、更新上限、試用期間、就業場所、就業時間、休憩時間、休日、時間外労働、賃金、加入保険、受動喫煙防止措置、募集者の氏名または名称を挙げています。派遣労働者として雇用する場合は、その旨を示すことも必要です。

項目リーフレットの記載例確認のポイント
業務内容(雇入れ直後)一般事務 (変更の範囲)●●事務雇入れ直後の内容だけでは足りない
賃金(1)基本給●●円 (2)■■手当(●時間分の時間外手当として▲▲円) (3)×時間を超える分は追加支給固定残業代を採用する場合はこの3点の記載が必要
時間外労働あり(月平均20時間)裁量労働制なら「●時間働いたものとみなされます」旨も記載
就業場所(雇入れ直後)渋谷営業所 (変更の範囲)都内23区内の営業所変更の範囲まで書いて1項目
受動喫煙防止措置屋内禁煙項目そのものを失念しやすい
厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」(求人企業向けリーフレット)の記載例をもとに作成

まず手を動かすなら、いま出している求人票を1枚印刷し、上の項目に一つずつ印をつけてください。特に確認したいのは、受動喫煙防止措置、試用期間、更新上限の3つです。この明示が行われない求人の申込みは、ハローワークや職業紹介事業者が受理しないことができるとされています(職業安定法第5条の6第1項第4号)。

2024年4月から追加された項目

2024年(令和6年)4月1日施行の改正職業安定法施行規則により、明示事項に次の3つが加わりました。①従事すべき業務の変更の範囲、②就業場所の変更の範囲、③有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)です。労働基準法に基づく労働契約締結時の明示も同様に改正されており、求人票と労働条件通知書の両方が対象です。

厚生労働省は「変更の範囲」を、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、労働契約の期間中における範囲と説明しています。配置転換や在籍型出向を命じられた際の場所や業務は含まれます。一方、臨時的な応援業務や出張、研修など、一時的に変更される際の変更先は含まれません。

③の更新基準は、「諸般の事情を総合的に考慮したうえで判断する」といった抽象的なものではなく、「勤務成績、態度、能力により判断する」「会社の経営状況も踏まえて判断する」のように具体的に記載することが望ましいとされています。通算契約期間や更新回数に上限を設けていない場合、「上限なし」と書く必要はありません。

改正に合わせるなら、求人票の業務内容欄と就業場所欄を(雇入れ直後)と(変更の範囲)の2段書きに直すのが最短です。労働条件通知書の同じ欄も同時に直しておくと、後の突き合わせが楽になります。なお、更新上限を新たに設ける場合や、設けた上限を短縮する場合は、その理由をあらかじめ有期契約労働者に説明することが必要です。

「変更の範囲」の記載例

記載の内容は、就業場所と業務がどの程度限定されるかによって変わります。厚生労働省のパンフレットは、①限定がない場合、②一部に限定がある場合、③完全に限定される場合、④一時的に限定がある場合の4つに分けて記載例を示しています。自社の職種がどれに当てはまるかを決めるところから始めてください。

限定の程度と例(雇入れ直後)(変更の範囲)
①限定がない/店舗の会計店舗における会計業務全ての業務への配置転換あり
②一部に限定/介護介護業務介護業務、介護事務
②一部に限定/運送運送運送及び運行管理
③完全に限定/業務ピッキング、商品補充雇入れ直後の従事すべき業務と同じ
③完全に限定/就業場所金沢駅西通り店変更なし
厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」に示された労働条件通知書の記載例をもとに作成

限定がない場合は、すべての就業場所・業務を含める必要があります。「会社の定める営業所」といった書き方も可能ですが、厚生労働省は、予見可能性の向上やトラブル防止のため、できる限り範囲を明確にし、労使間で認識を共有することが重要としています。業務名だけでは中身が伝わらないときは、「介護業務とは、入所者の着替え、食事、入浴及び排泄の介助等を行うもの」のように、かっこ書きを添えた例も示されています。

テレワークが通常想定される場合は、自宅やサテライトオフィスなど可能な場所を、雇入れ直後と変更の範囲の双方に書きます。この記載例は労働条件通知書向けですが、募集時の明示事項にも同じ3項目が加わっており、求人票にも使えます。

4つのどれに当てはまるかは、その職務で何を任せ、隣接するどの業務まで広げうるかを社内で言語化できているかで決まります。TekiLens(適レンズ)は職種ごとに重視する傾向を定義した職務要件プロファイルを備えており、職務要件を整理する場面での手がかりになります。

記載を省略できる場合と、後から明示できる場合

すべての求人で「変更の範囲」を書き込む必要はありません。厚生労働省のQ&Aは、募集等の時点で具体的に想定されていないものまで含めなくてよいとしています。従事すべき業務や就業場所に変更がない業種・職種・雇用形態であれば記載は不要とされ、変更が想定されない日雇労働者が例に挙げられています。

掲載枠の問題もあります。求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合には、「詳細は面談時にお伝えします」などと付したうえで、労働条件の一部を別のタイミングで明示することも可能です。ただしこの場合も、原則として、面接など求職者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があります。

実務では、求人媒体ごとに「媒体に載せる項目」と「一次面接の冒頭で渡す書面に載せる項目」を1枚の対照表にしておくと、担当者が代わっても抜けが起きません。なお、募集に関する情報は正確かつ最新の内容に保つ義務があります(職業安定法第5条の4第2項)。募集を終えた求人を掲載し続けないでください。

明示した条件と実際の条件が違う場合

面接等の過程で当初明示した労働条件が変更となる場合は、その変更内容を明示する必要があります。厚生労働省は、この明示を速やかに行うよう求めています。労働契約の締結時には、労働基準法に基づき労働条件通知書等であらためて明示します。求人票、面接時、契約時の3回で内容が一致しているかが問われます。

ずれは実際に表面化しています。厚生労働省の集計によると、ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等は、令和6年度で3,297件(令和5年度は3,761件)でした。要因別で最も多いのは「求人票の内容が実際と異なる」の1,478件、次いで「求人者の説明不足」の932件です。内容別では賃金929件(20.2%)、就業時間661件(14.4%)、職種・仕事の内容591件(12.9%)の順です。

なお、賃金欄に書く金額そのものの決め方は、募集賃金の相場の調べ方と、金額以外で選ばれる条件で扱っています。

説明不足が2番目を占める点は見過ごせません。書いた内容が正しくても、面接での口頭の補足が求人票と食い違えば申出につながります。明日できることとして、直近に採用した数名分の労働条件通知書と、その募集に使った求人票を並べ、項目ごとに突き合わせてください。差が出た項目が、次にトラブルになりやすい箇所です。面接で聞いてよいこと・いけないことは別記事で扱います。適性検査そのものの選び方は中小企業の採用・適性検査ガイドをご覧ください。

なお、虚偽の条件を提示して公共職業安定所または職業紹介を行う者に求人の申込みを行ったときは、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります(職業安定法第65条第10号)。書いた条件を守れる範囲に収めるのが近道です。TekiLensは、採用選考の段階で応募者の特性を整理し、面接で確認すべき論点を渡すサービスです。最新の要件は厚生労働省の公表資料および所轄の労働局でご確認ください。

よくある質問

2024年3月以前に作った求人票を今も掲載しています。修正は必要ですか。

掲載を続けている求人は現在も募集を行っている状態にあたるため、追加された3項目を含めて明示する必要があると考えられます。あわせて、募集に関する情報を正確かつ最新の内容に保つ義務もあります。個別の判断は所轄の労働局にご確認ください。

パート・アルバイトの募集にも「変更の範囲」の明示は必要ですか。

2024年4月1日以降に契約を締結・更新する労働者が対象で、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、定年後に再雇用された有期契約労働者も含まれます。ただし、業務や就業場所の変更が想定されない業種・職種・雇用形態では記載の必要はないとされています。

なお、パート・アルバイトの面接でシフトや通勤の条件をどう確認するかは、15分のパート面接で確認するシフトと通勤の条件で扱っています。

求人媒体の文字数制限で全項目が入りきりません。どうすればよいですか。

やむを得ない場合は「詳細は面談時にお伝えします」などと付したうえで、一部を別のタイミングで明示することが認められています。その場合も原則として、面接など求職者と最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示してください。

「変更の範囲」は広く書いておけば安全ですか。

限定がない場合はすべての就業場所・業務を含める必要がありますが、厚生労働省は、予見可能性の向上やトラブル防止のため、できる限り範囲を明確にし、労使間で認識を共有することが重要としています。実態と離れた広い記載は、入社後の認識のずれにつながります。

人材紹介会社に求人を出す場合も同じ義務がありますか。

求人者は求人の申込みにあたり、ハローワーク、特定地方公共団体、職業紹介事業者に対して労働条件を明示しなければならないと定められています。この明示が行われない求人の申込みは受理しないことができるとされているため、媒体を問わず同じ内容を整えておく必要があります。

参考にした資料

本記事の数値および制度の記載は2026年8月時点の公表資料にもとづきます。最低賃金のように毎年改定される項目や、法令の改正が予定されている項目については、必ず最新の公表資料と所轄の労働局等でご確認ください。

採用実務のご相談は無料で承っています。自社のケースで判断に迷う点があれば、お気軽にお問い合わせください。

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